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百合染野図書館

小説(?)を書いています 異能力の使い方

異能力の使い方 ー8話  風よ吹け-

私を2度助けてくれたのは、3人の元暴力団員…。

罪多き元暴力団員。警察からも鋭い目つきで睨まれている元暴力団員。

 

でも、私には3人は悪人に見えなかった。

 

私は3枚の印刷紙に目を疑った。あの助けた3人組が指名手配犯だと、今でも心底から否定する。

「高津秀平(たかつしゅうへい)サイバー攻撃 情報流出 違法取引  異能力:ブロック形成による破壊」

「沖波日南子(おきなみひなこ)連続殺人犯   異能力:周囲の物を液状化

「喜多川彰(きたがわあきら)強盗・窃盗犯   異能力:轟音」

紙に書かれた情報と顔写真と私の記憶が混ざり混乱を生んだ。
私があったときの姿が表の顔だとするなら、ここに書かれているのが本当の顔。裏の顔。
いや、もしかしたら私と会ったのが裏の顔で、ここに書かれているのが表の顔。
何が何だか自分でもわからなくなった。
警察が指名手配犯しているのだから余程警戒されているのだろう。

 

「過去に2回脱獄している。危険な奴らだ。私が1回捕まえたが反抗的な奴らだ」
永森さんは淡々と私たちに話しかける。重圧をかけて。
私は口から否定の言葉を出すことが出来なかった。
伊達ちゃんも驚いていた。
「桃内ちゃん…。この人たちって、この前のアライグマを捕まえた人たちだよね…」
伊達ちゃんが質問する。気になることは即座に質問するのが伊達ちゃんのいいところであり悪いところだと思う。特にこのタイミングでは。
「…うん。私その前から知っていたの」
やはり自分が見たことを警察の2人にわかってもらいたい。
「でも、私はあの人たちが悪人に見えません!5月に私の鞄をひったくられたことがありました。その時、あの人たちがひったくり犯を捕まえて私の鞄を盗り返してくれたんです!だから、悪い人じゃありません!たぶん…」
警察に説得しようと試みているのに何故か弱気になってしまう私。これじゃあ説得力がない。
「そうです!それに6月にアライグマが出没したとき、とっさに捕まえたのも彼らです!私と桃内ちゃんと動物愛護センターの係員さんが承認です」
永森さんと小間さんは戸惑いと冷たい目をしていた。
「それが本当だとしても過去に大きな過ちを犯したことは変わらない」
「人間は罪を行ったら牢獄で反省してもらう。それが悪人の定めだ」
2人は私たちの意見に反抗的だった。負けじと私たちも言葉で対抗する。
「それは過去の事ですよね!今は過去の罪を償うために善を施していると思います!」
「罪を持つ者が全て悪人というわけではないと思います!」
2対2の言葉の攻防戦。終止符を打ったのは間さんだった。
「…愛広組って聞いたことあるかしら」
そのワードを聞いて怯えていたのは伊達ちゃんだった。
「…愛広組。知っています。まさか彼らはそこの元団員…ですか」
愛広組…。正直言って、私、その暴力団名を初めて聞いたんですけど…。
あの日の事故から急に1人暮らしになったこともあって、お金を極力使わないために新聞をとってない。なおかつ電気代の節約のためテレビはほぼつけていない。ていうか4月からプラグをコンセントから抜いてしまっているぐらいだからね。外部からの情報を遮断しているため、今何が流行っているのか、問題になっているのかこれっぽっちも知らない。完全なる世間知らずの人間だ。
「ああ、この県内で一番大きい暴力団だ。過去に大きな事件を犯している暴力団で、彼らはその元団員。となると危険人物ととらえるのが妥当だ」
「私たち警察も捕まえようとするけど、拠点がまだ定かじゃないの。彼らを捕まえる理由のもう一つは拠点がどこにあるかを訊きだすこと…。悪人を撲滅するのが私たち警察の役目なの。下手すれば彼らに殺されてしまう可能性もあるわよ」
私たちは先ほどの反抗しようと思った気持ちは消えてしまった。
「特に桃内さんは先ほどの件を無罪と証明した後だ。今はただ見ただけと称しているが、彼らと関わりがあると君はすぐに我々警察に疑われるぞ。それにもう夕方だ。親御さんが心配すると思うからそろそろ帰ったほうがいい」
どうやらこの話は私たちが踏み込んではいけないものだったらしい。私たちは静かに警察署を後にして、陽が落ちる前に帰宅した。


後に伊達ちゃんから訊いた話だが、テレビのニュースや新聞に少なくとも1か月に1回は話題に出ているらしい。

何だろう…異能力って…
解説してもらい自分の脳内にある疑問の大半が解決したが、まだ疑問に思っていることが山ほどある。それどころか謎が増えてしまった。


8月15日。お盆。私は魔族が埋葬されている墓の前にいた。父さんと母さんの通帳が盗まれる前に作った仏壇だ。ただ、通帳のお金を多く使わないようにするため1つしか作っていないが…。通帳は後々盗まれてしまったのが残念だが。
墓を綺麗に掃除しながら、今日までの事を振り返ってみた。
あの事故から約4か月…。あの日から始まった一人暮らし。私はまだ一人暮らしに慣れていない。家事、勉強、バイト、そしてよくわからない異能力…いろいろありすぎて何から手を出せばいいのかわからない。
菊の花を添えて掃除を終えた。誰もいない静かな中で私は合掌した。
父さん、母さん、そして弟の…。
合掌の間、脳内で家族の姿を想像していた。

 

墓参りが終わり、家に帰る途中に見覚えのある身長の高い男性がこちらに向かって走って来た。よく見るとジャージ姿だ。
「おっ、桃内…高校以外で見るのは久しぶりだな」
この身長の高いジャージ姿の男性は三上浩一(みかみこういち)。私と同じ中学校出身かつ、御陵高校に通っている同級生。だけど普段学校では話したことがなかった。
「うん…そうだね」
でもどう返事を返せばいいか分からなかった。中学生の時は男女隔たり無く話していた。が、最近は人と話すことも少ない。今三上君と話すのが困難なのも、男子と話をすることを最近は行っていなかった付けかもしれない。
とりあえずジャージ姿が気になっていたので質問した。
「三上君はいつもここでランニングしているの?」
「ああ。バスケやるのにはやっぱ体力をつけないといけないからな。夏休みは毎日1時間走っているよ」
1時間も走っているのは驚きだった。私だったら5分走っただけでも息切れするぐらいなのに、彼はその10倍以上走ることを毎日続けている。聞いているだけでも驚きだ。
といっても、彼の運動神経が凄いことは中学生の時から知っている。中学校の体育祭で、ハードル走と走り高跳びで学校内最高記録を叩き出したことがあるレベル。
高校でも体育測定の結果が全て高評価で、学年内1番の運動神経だ。
ちなみに私の運動神経は、自分で言うのも恥ずかしいが底辺レベルである。
「すごいね…私には到底真似できそうもない。いや、出来ないだろうね」
三上君は私をじっと見つめていた。私の顔になんか付いていたかな?
「桃内…」
「え!?」
いきなり名前を呼ばれて驚いてしまった。一体何を考えているのかわからなかった。
「わ、私がどうかしたの?」
気になってしまったので、三上君に訊いてしまった。
「お前…本当に桃内なのか…」
「え?いきなり意味わからない質問を…。私は正真正銘、桃内真友よ」
「ああ、すまん。なんか中学生の時と変わったなと思っちまってな」
中学生の時と変わった?私の中では疑問だった。変わってないはず。まず変えるつもりもなかったから。
「前の時のお前ってどんなことでもポジティブに変えることが多かったのに、今は逆転してネガティブなことを考えるようになったな…」
「そ、そうだっけ?」
無意識になぜそうなってしまっていたのだろうか。自分でも何となくわかった気がした。
が答えを口にしたのは三上君だった。
「やっぱ、あの事故が原因だよな…。入学式後の…。あれから雰囲気が変わったよな」
自分の予想通りだった。あの事故が原因で私の生活が急変した。
少しの間、無音の空間が広がった。なんだか気まずい。
「ああ、ごめん。いやな話を持ち出しちまって」
「いいよ。気にしなくて。むしろありがとう。思ったことを正直に言ってくれて。私、頑張ってみるよ。さっき父さんと母さんと弟に挨拶して、これからも頑張るって決心したから」
「そうか。でも無茶はするなよ。何かあったら俺も助けるよ」
「三上君に頼るのは最終手段かな…」
でも私の心の傷を癒してくれるのはやはりすぐそばにいるにいる友だと感じた。
伊達ちゃんと三上君は私の支えだ。
「…ありがとう」
三上君はこくんと頷きまた走り出した。
私も前に進まないと。

 


歩き続いてようやく家に着いた。やっと炎天下から抜け出した。早速脱衣場で部屋着に着替えた。箪笥の一番上にあった地味なワンピースを取り出した。普段家にいるときはワンピースで過ごすことが多い。外では恥ずかしいが露出度が高いものだ。下手したら下着姿で家中過ごしている場合もある。流石に裸はないけど。
汗をかきすぎて気持ち悪かった。シャワーを使いたいところだったが水道代と電気代の節約のため使わなかった。いつも夜にシャワーを浴びているからその時にこの汗を流そう。
夏休み中はお金節約のためエアコンは使用せずに、扇風機を使うことにしている。
コンセントに扇風機のプラグを繋ぎ、スイッチをつける。ゆっくりと扇風機の羽が動き出し風を巻き起こす。私は目を瞑り、扇風機に顔を近づけて風を受けた。私の髪が風によって泳いでいるのが目を瞑ってもわかる。夏の暑さを忘れさせてくれる。
涼しい。
…ふと異能力の事を思ってしまった。
私の異能力は「風」。
ということは私もこの扇風機みたいに、風を巻き起こすことが出来るということだろう。
うまく使いこなせれば扇風機なしで涼しむことができ、電気代も削減できるかもしれない。
というジョークはさておき、実際の話この風の異能力を制御しなければならない。
自分の身体に危機が訪れた際に発動することが分かったものの、結局のところどう解決すべきなのか…。
永森さんと小間さん曰く、
「異能力の制御方法は人それぞれだから、最善な方法は知らない。己で見つけるしか手がない。しかし制御が可能になれば風を自由自在に使えるはず」と。
暗中模索でこの異能力の使い方を学ばなければならないのだ。私は異能力の使い方を一刻も早く発見しなければならないと思う。
もしまた勝手に発動してしまうとどうなるか分からない。風が強すぎて周囲に危険が及ぶ可能性もある。そうなれば私も悪人扱いで牢獄へと送られてしまうだろう。それは今無き家族が喜ぶはずがない。

 

夜10時にベランダに出た。家が2階建ての一戸建てだったこともあり、4畳ぐらいのスペースがあった。これなら周りに迷惑をかけないかつ、異能力の存在が知られることなく異能力を使用することが出来る。ありがたいことに自分の異能力は風なので見ることはできない。ということは他人から異能力を使っているか全くわからないのだ。
早速実験(?)開始。
とりあえず危機に会わなければ異能力は使えない。まずは膨らませた風船を針で割ることを試みた。よくバラエティ番組で見る罰ゲームだ。誰もがびっくりするはず。
おそるおそる風船に針を近づける。あと何ミリで風船に触れるか分からないぐらい近づけた。
風船が割れた。驚きのあまり目を瞑った。しかし風を発した感じはしなかった。
次に梯子を使い屋根に上り、ベランダに目を瞑りながら落ちていくことを試みた。(安全のために何枚か布団を引いておいたから大事故にはならないはず)
しかし問題があった。屋根に上ったことがない。ていうか普通屋根に上る機会なんてないだろう。そのため上った後バランスを保つことが困難だった。
挙句の果てに足を滑らしてしまい、そのまま落ちてしまった。体が宙に浮いている間、私は驚きすぎて目を大きく開けてしまった。
その時だ。体に膨大な風量をまとった。その風量なのか風力が強力だった。それは下にひいていた布団を全て吹き飛ばすほどだった。
案の定何もクッションがないままベランダに着地した。着地した反動が一切なかった。これも先ほどの風の異能力のおかげだろう。
これぐらいの恐怖があれば異能力が発動するとわかり、また空中実験のセットを組み立て、自分から勢いよくベランダに向かって落っこちた。
が、今度は異能力が発動しなかった。そのまま布団に着地した。でも布団があっても痛かった。
この後10回ぐらい続けたが、全く発動したかった。
ただ、分かったことが3つある。
1つ目は、現段階では急なアクシデントでないと風の異能力が発動しないということだ。故意的なものでは発動しない。永森さんと小間さんの推測道理だ。
2つ目は、発動時は必ず威力が最大になっている。さっきのように布団を簡単に吹き飛ばしてしまうぐらいだ。これをうまく調整しなければならない。
3つ目は…無理して体を痛めつけてはいけないことだ。無理して屋根から落ちるなんて危険な行為を連続で試すんじゃなかった…。特に尻が痛い…。
この夜に解決したのはたった3つだ。(1つどうでもいいけど)わからないことが山積みだ。私以外に異能力を使える人がいればいいのに…。

 

あの3人を思い出した。あの3人に異能力のことを訊けば、回答が見つかるはず。
でも警察は彼らを睨んでいるし、うかつに近づけば私も怪しまれる。
それに本当に3人が元暴力団員なら近づくのは自分のみが危険だ。でもそれを承知で訊かなければ答えが出ない。

 

「探そう。あの3人を…」

 

 

たぶん続く

 

あとがき

文字埋めが露骨( ゚Д゚)

お久しぶりです百。百合染野(ゆりぞめや)です。

今回色々とおかしくなりました。なんか短編を3つつなげたような感じになってしまいました。

当初は今回も解説を半分ぐらい打とうと思ったのですが、意外と短くなってしまいました。そのためお盆の話を付けました。三上君…後々どんな感じになるのか。

そして少しばかりですが桃内ちゃんも一歩進み始めています。

異能力をどう使うか探している最中です。この後の展開はどうしようか考えながら書いていきます。

 

感想、誤植がありましたらコメントにどうぞ

 

 

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