百合染野図書館

小説(?)を書いています 異能力の使い方

異能力の使い方 ー3話  動物と人間-

早速ハンカチ探しを開始することにした。小学生は涙を流すのを止めた。私と伊達ちゃんは時々通行人にこのことを聞いたが、誰も知らなかった。
伊達ちゃん曰く、御陵小学校の通学路は地域の人たちがボランティアで道路掃除をしている。また、街灯の光と光が途切れないぐらいの街灯の設置数のため、小学生どころか市民にも優しい道であるらしい。そのため、落とし物もすぐに見つかる。ボランティアの人たちが警察に届けることがよくある、だって。

 

そう言っていたがハンカチが見つからない。伊達ちゃんが警察に電話したが、ハンカチは無いとの話だ。
落とし物が見つからないのは珍しいことらしい。
ハンカチ探しは続いていく。

 

気が付けば、太陽が地面に潜り込んでいた。通学路の街灯が点灯した。
「だいぶ暗くなったね。ねぇ、暗くなったけどもう少し探してみる?」
伊達ちゃんは小学生に訊いた。小学生は首を縦に動かした。その返答を見た伊達ちゃんはポケットから携帯を出した。
「それなら携帯を貸すから、家の人に帰るのが遅くなることを伝えておいてね。」
小学生は早速携帯を借りて家の人と通話をした。
そういえば私もしないと。バイト遅れることを。
バイト先のスーパーに電話をした。遅れる理由はフィアーネスのハンカチ、ではなく財布を落としたという嘘をついた。悪女だなあ私。魔女じゃなくて。

 

私と小学生は電話を済ませた。3人で再びハンカチ探しを始めた。
必死に探すものの刻々と時間は過ぎていく。
太陽はもう全て沈んでしまっていた。
太陽が沈むと虫や動物たちが騒がしくなってきた。カラス鳴き声が夜なのに大声で聞こえる。何かわからない虫が鳴いている。犬の遠吠えが町中に響く。動物にとっては夜からが活動が本格化するのか。そう思った。
「…猫の鳴き声がする。」
小学生がつぶやいた。
「猫?どこから聞こえたの?」
「…あっち。」
小学生が指差ししたのは、幅が1メートルぐらいの狭い道だった。確かに猫の鳴き声が聞こえる。たぶん子猫4匹ぐらいだろう。
伊達ちゃんは首をかしげていた。
「おっかしいなあ、ここら辺は猫を飼っている民家はなかったはずだけど。」
なんでも知っているなあ伊達ちゃんは。普通なら通学区域すべてのことを知っている人は市長であっても、50年以上住んでいる人であっても把握できないことだと思う。天才脳ってすごい。
私が謎の感銘を受けている間に、小学生はその道に歩いていた。ハンカチ探しは何だったのか。いつの間にか猫探しになっていないかこれ。
私と伊達ちゃんは小学生に着いて行った。
小学生にとっては幅1メートルの道はそう狭くない道だろうけど、私たち2人にとっては狭い。小学生は難なく進んでいく。
「あった!」
小学生は喜んでいた。
遅れて私たち2人もついた。
白い猫が段ボールに5匹入っていた。種類はわからないけど。1匹は親なのか、4匹と比べて大きさが4倍5倍もあった。段ボールの中には猫だけが入っているわけではなかった。缶詰の空や散らかっているキャットフード。そして、探していたフィアーネスのハンカチがあった。まるで毛布のように使っていた。
「あった!ハンカチ!」
小学生は手を伸ばそうとした。
「触ったらダメ!」
そういったのは伊達ちゃんだった。
「え、なんで?」
伊達ちゃんは段ボール箱の下を指さした。マーカーで書いたのだろうか、

「心優しい方、この猫を飼ってあげてください」
という文字があった。
「この猫たちは捨て猫だね。犯人は誰かわからないけど。でも、そういう人って猫の管理や愛がしっかりしていないんだよ。例えば、注射していないとか。家で飼っている猫とか犬とかは注射によって誰にでも安全に触れ合えるけど、注射をしていない場合、人とかに危ない病気とかを写してしまうからね。」
狂犬病のことを小学生にわかりやすく言うとはすごいなあ。そういえば私空気だなあ。何もいいことしていない気が。
「とりあえず動物愛護センターに電話してここに来てもらうことにしよう。こういうことは専門の人が扱ってくれるのが一番いいからね。」
そういって伊達ちゃんは携帯で近くの動物愛護センターを探して電話をした。
それにしても誰がこの猫たちを捨てたのだろう。伊達ちゃんの言ったように管理や愛が足りない人が捨てていったのだろう。動物をどんな目で見ている人だろう。何故ここに捨てたのだろう。拾って欲しいならこんな狭い道に置いていく必要はないだろう。まあ、人が人だったからかもしれない。言い切れることは、猫には罪には一つもない。そして一番苦しんでいるのは猫だ。楽でずるい道を選んだその人が悪い。
「30分後、動物愛護センターから係員が来る、だって。もうかなり遅い時間だから、君はそろそろ帰って。ハンカチはコロッケ屋のおじさんに渡しておくよ。」
「…わかった。ばいばい猫ちゃん。元気でね。」
その言葉を残し、小学生は帰った。私と伊達ちゃんは幅が狭い道から出て係員が目に付きやすいところで待っていた。
「…酷い、よね。心がない人間がいるのって…」
伊達ちゃんも私と同じことを思っていたらしい。
「でも、本当の正解は誰もわからない。動物愛護センターも本当は預かりたくないだろうね。」
知っている人も多いだろう。私もテレビで何回か見たことがある。
動物愛護センター。その正義感がある名前と裏腹に殺処分をしているところだ。愛護=死刑。その等式は絶対おかしい。でも、従業員だってやりたくてやっている汚れ仕事ではない。好きな動物や人を殺すのは誰もがやりたくない。
もしかして、あの猫たちも…。いや、そんなこと思っちゃだめだ。猫たちに罪はない。いや、まず罪がある動物はこの世界の中で人間だけだ。

しばらくして係員がやってきた。
「お待たせしました。電話で話していた猫はどちらにいますか。」
そう尋ねられ、私たちは狭い道に係員を導いた。

「キィィィィィィィ!!」
通っている間に聞いたことのない鳴き声が聞こえた。苦しい感じの声だった。
さっきの猫なのか。いや、猫って苦しいときってそう鳴くのか。私の貧相な脳ではわからなかった。
白い猫が入っている段ボールが見えた。苦しい鳴き声がだんだんと大きくなっていく。
段ボールから白い猫が姿を出した。大きさ的に親猫だろう。
「…伊達ちゃん、私たちが見つけたのって白い猫だよね」
「…うん。そうだよ…。」
「でも、あの猫。」
猫が赤い血で染まっていた。いや、それ以上説明したくないほどの姿だった。
親猫の後ろから猫が出てきた。

!?


いや猫じゃない!?たぬきに似ている!?一体…何!?
「…アライグマだ…」
職員はつぶやいた。
影からさらに何匹かアライグマが出てきた。
「この道から一回でましょう。危険すぎます。」
え?なぜアライグマが危険?そう思いつつ私たちは道から出た。

 

「アライグマはかわいいとかよく言われていますが、実際には悪影響が多数ある侵略的外来種です。人間を全く恐れず、まずなつきもしない動物です。また、猫や犬、鳥などのペットにも被害があります。そして危険なことは洗いアライグマには多くの寄生虫が体内にあり、噛まれたらほぼ100%死にます。申し訳ないのですが、私たち動物保護センターではアライグマの駆除を行っていません。今から駆除団体に連絡します。」
解説を終えた係員は電話を始めた。
そうだったのか。私知らないことばかりだな。アニメとかでかわいいイメージとか持っていたけど、そうではなかったのね。当時はあまりアライグマの生態が分かっていない人が多かったのが原因なのね。
「そういえば、アライグマは冬眠もしないし、日本全国各地にいるっていうのを本で見たことある。」
本当に伊達ちゃんは何でも知っているなあ。アライグマも恐ろしいけど、伊達ちゃんも恐ろしい。
「…思えばあの猫たち。生きているかな。」
「さあ、親が頑張ってかばっていたのかもしれないけど、あの姿だと、子猫たちも…」
「このことは、あの小学生には内緒にしよう。」
「…そうだね。」
「そうそう、かわいい女の子が泣いちゃう姿は見たくないからねえ。」
「だよね…ん?」
「アライグマがJKやJD、JC、JSを泣かせるのは嫌な話だ。スタイル完璧JKとツインテメガネJKにそんなことはさせない!食い止めないと」
「あなた誰ですか!?変質者!?」
勝手に男性が会話に割っていた。それに気づいた伊達ちゃん驚いていた。その男性は眼鏡を付けたチャラい…あれ見たことあるぞ。
「あなたはこの前の!…」
続きを言おうとしたらチャラ男が耳打ちしてきた。
「前言ったと思うけど。あの出来事の内容は内緒な。」
「ああ、はい…」
そして予想通り、2人も来た。
「喜多川、そんな女に手を出しちゃかんだろ。あの男の人にもくっつきゃあええがね。」
「もう少し、女性との接し方を考えてみてくださいよ。」
片目眼帯オールバックのどこのなまりか分からない女性と、真面目そうな男性がやってきた。チャラ男の耳を引っ張って係員のもとへ行った。
「桃内ちゃん、この人たちと知り合い?」
「ええと、なんといえばいいのか…」
どうやって説明しよう…。鞄のことをどこまで説明していいのか。

「君たちが駆除するのか!?危険すぎる!」
係員も驚いていた。さっきまで敬語だったのに。
「アライグマは体内に寄生虫が多く…」
「そのことは知っています。確かアライグマは音で追い払うことができるので、それを利用します。」
係員は首をかしげていた。3人は狭い道に入っていった。
本当に大丈夫なのか。

 

たぶん続く

 

 

あとがき

少し遅れました( ゚Д゚)どうも百合染野(ゆりぞめや)です。

本当は前回と今回を合わせて1話にしたかったのですが、文字数が完璧にオーバー。

しかも、まだ続きがある。( ゚Д゚)

これどう収拾つけるのか自分でも困っています。

次回でハンカチ探しを終わらせます。

 

感想、ご指摘があればコメントにどうぞ。